レイシズム法としての入管法を規制する反レイシズム規範を!
現行の入管法制は、いわばレイシズム法制として機能しています。ブラック・ライブズ・マター運動が批判するように米国の警察システムのルーツが奴隷にされた黒人の抵抗を取締るレイシズムにあるとするなら、戦後日本の入管体制のルーツは朝鮮植民地支配と戦後の朝鮮人弾圧のレイシズムにあります。しかし、日本では、同じ先進諸国であった欧米において半世紀前に反ナチズムや公民権運動によって成立した反レイシズム規範や、それを公認した差別禁止法制度が未だに存在しません。
欧米では、反レイシズム規範が入管法のレイシズムを規制し、ひいては「スリーゲートモデル」に象徴される移民政策(つまり入管政策+差別禁止を基礎にした統合政策)をつくることに成功してきました。それに対して、日本では、未だ移民政策はおろか差別禁止法や公的な外国人政策さえ存在せず、あらゆる外国人政策が入管法によって代用されてきたという特殊な経緯があります。欧米のように、反レイシズム規範の歯止めがない状態です。このように、日本が入管に恐ろしい専制的権力を行使させるレイシズムのシステムを持ち得ていなければ、現在のほぼ0%に近い難民認定率や悪名高い全件収容主義が起きえたでしょうか?今回の入管法改悪はこのようなレイシズムのシステムのさらなる強化にほかなりません。
問題は、今回の入管法改悪のみならず、これまでの入管法が許してきた国家権力の自由裁量に外国人政策を委ねるという、日本独特のレイシズムのシステムに問題があります。そして、それを規制しうる反レイシズム規範を、市民社会内に確立しなければなりません。諸外国では、入管法のレイシズムが非正規滞在者を強制送還しようとする際に、たとえば体を張って実力で輸送車を阻止する英国の事例、警察権力が入れない教会で24時間連続でミサを続けることで籠城するオランダの事例、ルフトハンザのパイロットが強制送還命令を一人ずつ拒否するドイツの事例や、トランプの連邦政府を提訴する米国のサンクチュアリシティの事例など、豊富な実践例があります。上記のような地域社会・教会・労組・自治体といった社会的連帯を通じた反レイシズムによって、入管法のレイシズムと正面から対決することが、今日の世界各地で求められています。
人種差別撤廃条約が義務付ける包括的人種差別禁止法さえ存在しない日本社会では極めて困難な道のりではありますが、私たちは諸外国の実践に学びつつ、入管法と対決しうる反レイシズム規範を市民社会に築いていく必要があります。


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